庶民の日々の暮らし


 まずは、庶民の典型的な一日のタイムチャートを紹介します。
 詳細な年代は不明ですが、庶民の食事が1日3回になるのは、1657年に起きた「明暦の大火」後の復興作業の労働者に昼食を出したのがきっかけ
といわれているため、少なくともそれ以降のモデルであることは確かです。
 比較のために、将軍と吉原の遊女とそして私の一日も掲載します。

※「一目でわかる江戸時代」竹内誠監修(小学館)を参考にしています。
 
時刻
長屋の一日
将軍の一日
吉原の一日
私の一日
大工
女房
 4:00
(暁七つ)

客を送る
(後朝の別れ)
 5:00
(七つ半)

就寝
起床
 6:00
(明け六つ)
起床
湯屋へ
朝食の支度 目覚める
起床
 7:00
(六つ半)
朝食
朝食
床を離れる・口をすすぐ
手水を使う
朝食
出勤
 8:00
(朝五つ)
仕事開始     
洗濯(井戸端会議)
朝食
月代と髭を剃る・髪をあげる
 9:00
(五つ半)
大奥へ
位牌に拝礼・御台所に対面
起床
会社着
仕事開始     
10:00
(朝四つ)
休憩 (政務開始)
老中と面談・大名を謁見
入浴・化粧・掃除など
11:00
(四つ半)
昼食の支度

昼食
12:00
(昼九つ)
昼食
昼食

(政務終了)
昼見世始まる
昼食
13:00
(九つ半)
仕事再開
繕いもの
学問の講義
乗馬・剣術など
仕事再開
14:00
(昼八つ)

休憩
15:00
(八つ半)
洗濯・針仕事
内職
大奥へ
16:00
(夕七つ)
昼見世終わる
17:00
(七つ半)
夕食の支度
夕食
18:00
(暮れ六つ)
終業
湯屋へ
入浴
夜見世始まる
19:00
(六つ半)
夕食
夕食
20:00
(夜五つ)
湯屋へ
読書など
就寝
21:00
(五つ半)
就寝
客の相手をする
22:00
(夜四つ)
当番の小姓と話す
終業
帰宅の途に
23:00
(四つ半)
就寝

帰宅
 0:00
(暁九つ)

遊女が張見世を引く
夕食
入浴
 1:00
(九つ半)
就寝
 2:00
(暁八つ)
 3:00
(八つ半)


 こうして比較してみると、普段の一日に於いては現代人である私が如何に働いているかが分かります。
 「柳庵雑筆」によると、大工は年間294日程度働いたようです(休みは正月と節句と悪天候の日)。
 現代人である私は、週休二日+年末年始休+夏休み+有給休暇があるため、年間労働日数こそ短く、大体230日というところになるでしょう。
 以上から年間の労働時間を計算して比較してみます。

   大工 :  8h × 294日 = 2,352h
   私  : 12h × 230日 = 2,760h

 つまり、年間の労働時間で比較しても江戸時代の大工より現代の私の方が17%も余計に働いていることになります。通勤時間も労働時間の一部と見
做せば、実質の差はもっと広がります(その場合、差は47%になります)。
 文明は我々に何をもたらしたのでしょうか。
 CPUの処理速度が向上しハードウェア(パソコン)の性能が向上すると、それにつられて搭載されるソフトウェアがやたら重くなって、結局性能向上が
ほとんど見られないということが往々にしてあります。

 科学技術が発達することにより我々の生活は便利にはなりますが、豊かにはなっていないような気がします。