長屋の花見

  貧乏長屋の花見風景を題材にした「長屋話」である。書物を紐解くと、上方落語の「貧乏花見」が原作で、三代目蝶花楼馬楽が東京に移し、それを四代目の柳家 小さんが成熟させたとある。また、花見の舞台となる「上野の桜」は、三代将軍家光が寛永寺の天海僧正のために奈良の吉野から移植させたことにはじまる。

 花見といえば、我が深志高校でも、シーズンになるとクラス毎に花見に出掛けていた。松本地方は、標高の所為もあり、4月20日過ぎに桜が満開となる。新 入生の時には「高校生のくせに花見なんて」とちょっと面食らったが、これもバンカラ時代からの旧き良き?伝統なのだろうと無理矢理納得した。出掛けるのは 主として松本城やアルプス公園などの市内では有名な桜の名所だった。
 これは私のクラスではないが「そういえば蟻ヶ崎高校のグランドにも桜があったな」と、本当に蟻ヶ崎高校に行ってしまったクラスもある。
 知らない方々のために解説しておくと、深志は当時すでに共学だったとはいえ、元男子校という暗い過去があるため、男子対女子の比率が3対1くらいだっ た。それとは逆に、蟻ヶ崎高校は元女子校だったため、男子対女子の比率が1対3くらいだった。花見と称して何の「花」を見に行ったのか少々疑問が残る。

 長屋の花見であるが、この噺については桂文朝をお薦めする。この噺の主役は長屋の大家だが、彼の演じる何とも情けない大家さんにはペーソスがあり、可笑しさにも味わいがある。